『サマーキャンプ vol.5』収録作「ナツのラブレター」(なかば)
海がみたい。
青い空と水平線からわきあがる入道雲。
潮風にさびれた町の匂い。坂の町をどんどん上っていけば、背後に広がる町並みが、ジオラマのように目に映る。
そんな衝動が、もうずいぶん長いこと自分の中にありました。いつか海の見える町を舞台に話を書いてみたいなあ、と。海をみる少年って、もうそれだけで絵になるじゃないですか。潮風が吹きつけたりしたら完璧。ブラボー。
SUMMER CAMP Vol.5 収録作『ナツのラブレター』は、そんな積年(?)の想いを込めて、田舎の港町を舞台に設定しました。もっと具体的に言うと、伊豆下田から伊豆高原あたりを想定しています。
この写真は、今年の初夏に訪れた伊豆下田の寝姿山からみた風景です。
話それますが、今、下田ってスゲーんですね。アニメ『夏色キセキ』一色! キャラクターが一日駅長やってたり。寝姿山に登るロープウェイの中でも、彼女たちの音声アナウンスで、バッチリ下田の町について解説していただきました。
山頂の神社で見つけました。これカワイイですなあ。『あした はれますように』て書いてあります。
何やら旅ブログみたいになってしまいましたが、このとき感じた空気感を逃さないように、帰ってきてシコシコと『ナツのラブレター』を書き上げた次第です。
月がきれいですね――。
昔のエライ小説家が、アイ・ラブ・ユーをそう訳した。
高校一年の夏。ぼくは、いまだに、誰にも告白をしたことがない。
淡い想いを胸に秘めた高校生。
小さな背と、器用貧乏がコンプレックスの奈津陽二。
『そうだなあ……月より、きみの味噌汁が飲みたいとか、どーだ?』
奈津の親友で、中学からの付合い。トボけているけど憎めないヤツ、青木宗一郎。
高校一年の夏なんて、中学の延長戦みたいなもんだ。そんな風に、平凡で変わり映えのない、いつもの夏になると思っていた。
『ラブレターを書こう』
『なんで? だれに?』
『宛名なんてないさ。練習だよ、練習。いずれ書くことになるだろう、ラブレター』
『いずれ書くかー? ラブレターを?』
ふとしたはずみで書いた宛名のないラブレターが、行き違い、すれ違い、彼らの夏を翻弄する。ちょっとややこしくて、おかしな、小さな恋の物語です。皆さんのもとにも、このラブレターが届きますように。
と、まあそんなワケで、サマーキャンプ一同、11月18日開催の第15回文学フリマに向けて鋭意作業中です。いろいろと新しい試みもありつつ、自分たちも新刊の完成が楽しみであります。
遊びきたよ〜、なんてお気軽な感じで、是非ブースにお立ち寄りください。(配置番号まだ未発表です)